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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES

宣教者の声

カンボジアからのお便り(コンポンルアンにて)

日本カトリック信徒宣教者会(JLMM) 平 西紀
水上村コンポンルアンの子供たち
 今回、水上村コンポンルアンの子供たちの通学船購入のためにご支援を頂いたことに深く感謝致します。現在、子供たちは毎日元気に公立小学校へ通っています。
 水上村コンポンルアンは、カンボジア王国のほぼ中央部に位置するトンレサップ湖の水上に浮かんでいる村です。このトンレサップ湖は、雨期には増水したメコン川の水が流れ込み、面積が乾期の3倍から4倍に広がる珍しい湖で、人々はいかだの上に建てた家や小さなボートに屋根をつけた家で、水位に合わせて移動しながら生活をしています。人口約6,000人、1,600世帯以上の人々が船の上で生活しており、そのうち約1,000世帯がベトナム人で、住民は主に漁業で生計を立てています。貧困世帯が多く生活全般に様々な問題を抱えています。その一つに、多くのベトナム人がカンボジア公用語(クメール語)を話せないということがあります。そのために公共機関を利用することができず、カンボジア社会から孤立した状態にあります。
 その影響は子供たちに大きな問題をもたらしています。クメール語の読み書きや話すことができない子供は、カンボジアの公立小学校へ通うことができません。言葉の問題、保護者の理解不足、貧困などが原因となり、就学年齢にある子供のほとんどが学校へ通っていない、または途中退学している状況です。JLMMは、カンボジア・バッタンバン教区と協力し、コンポンルアン・カトリック水上教会をベースに、ベトナム人の子供を対象にクメール語の識字教育を行っています。このまま教育の機会が与えられず、クメール語を話すことができなければ、「カンボジア社会からの孤立」や「貧困の連鎖」などの現在の問題点を、将来子供たちが大きくなってからも抱え続けることになります。教会の識字教室は子供たちに様々な教育を提供すると共に、公立小学校へ入学するためのプレスクールという役割も果たしています。
 昨年度、24名の生徒を教会の識字教室から公立小学校へ送り出しました。しかしながら、残念なことに半年を過ぎる頃には全員が退学してしまいました。いくつかの原因がありますが、その一つに学校までの交通手段がないことがあげられました。そこで通学船を購入することを検討し、今回、ご支援を頂いて通学船を購入することができました。
 2005年10月に16名の生徒を教会の識字教室から公立小学校(水上)へ送り出しました。5ヶ月が経過し、両親の都合などで退学したのは3名。13名の子供が今でも元気に公立小学校へ通っています。昨年の今頃は全員の子供が退学していたことを考えれば、通学船はとても大切な役割を果たしていると思います。途中退学を防ぐ為に、子供たちとの定期的なミーティングをもうけています。ベトナム人であることでいじめられたり、お金がないことで補習授業を受けられなかったり、いろいろな問題を識字教室の先生たちも一緒になってフォローしています。
 子供たちがより良い教育を受けることができ人材が育成されれば、未来のコンポンルアンを変えていく土台になると思います。将来、子供たちがカンボジア社会との交わりを持ち、自らの人生を切り開いていってくれることを強く望んでいます。たくさんの問題を抱えるこの村の中にあっても、子供たちが通学船に乗って、笑顔で手を振りながら登校して行く姿に神様からの恵みを感じる毎日です。
2006年3月13日